■イージス・システム搭載艦を建造へ
8月31日,防衛省は令和5年度概算要求の主要事項である統合ミサイル防空能力の一環として,イージス・システム搭載艦の建造のための構成品取得費等を折り込んだ。
イージス・システム搭載艦は廃案となったイージス・アショアの代替策で,1番艦は令和9年度末(2027年度末),2番艦は10年度末(2028年度末)に就役する。
細部が確定しない事項要求のため建造費は明示されていないが,導入コストはイージス・アショアの約4,000億円(2基分の試算)を超える可能性も指摘されている。
既存イージス艦より高度な弾道ミサイル迎撃能力と,極超音速滑空兵器(HGV:Hypersonic Glide Vehicle)等に対応する拡張性を有する。
主要目は基準排水量22,000トン,全長210メートル,幅40メートル。主兵装は弾道ミサイル防衛用のスタンダードSM-3ブロックIIA,巡航ミサイル防御が可能なスタンダードSM-6のほか,12式対艦ミサイル(能力向上型)を装備する。さらにレーダー・システムはイージス・アショア用に調達したSPY-7(V)1を搭載する。
基準排水量は“まや”型イージス護衛艦の約2.5倍だが,乗員数はほぼ3分の1の110名で,居住性を重視して個室化が図られるという。乗員の一部は陸上自衛隊員で構成されるといわれ,維持・運用に一部民間委託を検討するなど,従来の護衛艦とはまったく異なる運用方法が検討されているようだ。
艦がここまで大型化した最大の要因は,耐航性を確保しつつ,SPY-7(V)1を搭載化するためと推察される。
陸上用に設計されたSPY-7(V)1は艦載用のSPY-7(V)2より能力的に優れる反面,アンテナ直径が大きく,大出力の電源と大型冷却システムが必要となる。
なお,イージス・システム搭載艦の船型として,基本計画時にはバージ案,単胴案,多胴案の3案が存在していたとされるが,最終的に一般的な単胴案が採用された。
現時点で要求速力は不明だが,長さ/幅比は5.25と一般的な護衛艦より大幅に肥えた船型で,数値的に掃海艇に近く,高速力の発揮は困難と思われる。