●「ユナイテッド・ステーツ」立退きへ
かつて北大西洋航路の韋駄天定期客船として著名だった米ユナイテッド・ステーツUnited States(53,329総トン,1951年竣工)が,立退きを命じられ存亡の危機に立たされている。1969年に引退後,紆余曲折を経て保護団体の所有となり,米フィラデルフィアの埠頭に1996年から28年間係留されてきたが,保護団体と埠頭の運営会社との間で係留料の値上げの是非をめぐって対立し,2022年から続いていた裁判がこのほど結審した。判決では値上げ分の支払いは不要となったものの,9月12日までに立ち退くように命じられた。全長300メートルを超える大型船の新たな行先は現時点で見つかっておらず,保護団体では救済キャンペーンを行なって移転などに伴う資金の調達を図ると同時に,港湾や政府の支援も求めている。同船はこれまでさまざまな活用方法が模索されてきたがいずれも実現しておらず,移転場所の候補として海軍の桟橋や海軍工廠などが挙がっているものの,廃船になる可能性も否定できない。
(UNITED STATES CONSERVANCY)