●ULCV「エヴァー・ギブン」スエズ運河座礁事故

 極東からロッテルダムに向かっていた台湾エヴァー・グリーン運航の超大型コンテナ船(ULCV:Ultra Large Container Vessel)エヴァー・ギブンEver Givenが,去る3月23日午前8時頃(現地時間。以下同),スエズ運河で座礁し航行不能になった。全長約400メートルの本船が幅300メートルの運河を斜めに塞ぎ,1日平均約50隻が通行する運河がマヒした。スエズ運河庁はすぐさまサルヴェージを開始,事故から6日後の29日離礁に成功,同日午後,運河中間にあるグレート・ビター湖に移動した。通航は即日再開され,400隻を超えていた滞留船は4月3日までに解消し,運河は通常に戻った。本船は今治造船で2018年に竣工したシリーズ船の7番船。船主は今治造船グループの正栄汽船。主要目は219,079総トン,199,489重量トン,全長399.94メートル,幅58.8メートル,吃水16.0メートル,速力22.8ノット,コンテナ積載数20,124TEU。

 事故原因は風速約20メートル/秒の砂嵐による視界の欠如と見られているが,4月13日現在原因の発表はなく,グレート・ビター湖にとどまっている同船は,裁判所命令によって差し押さえられた。事故による損失や離礁作業費などを含む賠償額9億1,600万ドル(約998億円。現地経済裁判所が決定)が支払われるまで,この状態が続くという。賠償額については船主や保険会社と運河当局との交渉が難航している。なお,これに先立つ4月2日,船主の正栄汽船は今回の事故に対し「共同海損」(GA:General Average)を宣言したことが判明した。航海中に発生した損害を,その航海に関わる荷主や用船社など関係者で負担し合う制度の共同海損は,船主が選任した精算人により精算作業を進めることになるが,事故処理の長期化は避けられない模様だ。今回の座礁事故を受けて赤羽国交相は,多様な輸送手段・輸送ルートの確保の重要性を認識し,シベリア鉄道による日欧間貨物輸送や北極海航路の実現などの代案手段について検討する意向を示した。

                    (SUEZ CANAL AUTHORITY)